「程度副詞+形容詞」構造は、~ years old、so ~ that、too ~ to do、more ~ than(比較表現)など、様々な文で使われています。形容詞が尺度を示し、程度副詞が尺度における程度の情報を与えます。伝統的な文法(学校文法)では、これらの文は慣用的表現として説明されていますが、「程度副詞+形容詞」構造として認識することで、包括的に理解することができます。
ここでは、C. L. Baker著「 English Syntax」を参考にして、「程度副詞+形容詞」構造を紹介します。受験英語で特に理解が難しいといわれている「クジラの公式(no more ~ than)」も「程度副詞+形容詞」構造で明確に理解できます。
程度副詞+形容詞」構造の例
「程度副詞+形容詞」構造の例文を示します、[ ] 内が「程度副詞+形容詞」構造で、斜字体の語が程度副詞です。
<主節のみの文>
Tom is [very tall]. (トムはとても背が高い。)
She is [twelve years old]. (彼女は12歳である。)
[How old] is he? (彼は何歳ですか。)
He is [no rich]. (彼は金持ちなんかではない。)
<従属節を含む文>
It is [so hot] that we can’t play baseball. (とても暑くて、野球をすることができない。)
It is [too hot] to play baseball. (野球をするには暑すぎる。)
You are [old enough] to have a cell phone. (あなたは携帯電話を持ってもよい年齢だ。)
「程度副詞+形容詞」構造の図解:主節のみの文
主節のみの文の「程度副詞+形容詞」構造の意味を図解します。
Tom is [very tall].
形容詞「tall」は、身長が尺度であることを表しています(上の図の左側「tall」の図)。程度副詞「very」は、一般的な認識としての高い程度を表しています(上の図の右側「very」の図の網掛けの領域)。「程度副詞+形容詞」構造である「very tall」は、「背の高さがveryの領域にある」ことを表します。
She is [twelve years old].
「twelve years」は、数量を表す名詞ですが、形容詞の前では副詞句として機能します。
形容詞「old」は、年齢が尺度であることを表しています(上の図の左側「old」の図)。副詞句「twelve years」は、数量として「12年」であることを表します(上の図の右側「twelve years」の図)。「程度副詞+形容詞」構造「twelve years old」は、「年齢を尺度とし、その値が12年である」ことを表します。
「数量+形容詞」の表現には、
3 meters high (3 mの高さ)
10 kilometers long (10 kmの長さ)
などがあります。
[How old] is he?
形容詞「old」は、年齢が尺度であることを表し、程度副詞である「how」は、「数量がどれくらいか」という疑問を表します(上の図の右側「how」の図)。「程度副詞+形容詞」構造「how old」は、「年齢を尺度とし、その値がどれくらいであるか」ということを表します。
He is [no rich].
「no rich」の「no」も程度副詞です。「no+形容詞」は修辞的な表現ですが、まずは、文字通りの意味をみていきます。
形容詞「rich」は、裕福さが尺度であることを表していて、当然何らかの裕福さが想定されます(上の図の左側「rich」の図)。程度副詞「no」は、程度が「ゼロ」であることを表しています(上の図の右側「no」の図)。「no rich」の文字通りの意味は、「裕福さを尺度とし、その程度がゼロである」ということで、単に「裕福ではない」となります。
この文が実際に意味するのは「貧乏である」ということです。何らかの裕福さが想定される形容詞「rich」の文でありながら、その程度が「ゼロ」であるとして、読み手の想定をひっくり返すことにより「poor」であることを強調しています。
「程度副詞+形容詞」構造の図解:従属節を含む文
従属節を含む文の「程度副詞+形容詞」構造の意味を図解します。that節やto不定詞などの従属節は程度副詞に対し参照情報を与えます。
It is [so hot] that we can’t play baseball.
主節の「It is so hot」を考えます。形容詞「hot」は、気温が尺度であることを表します(上の図の左側「hot」の図)。程度副詞「so」は、程度が「そのようである」ことを表します(上の図の右側「so」の図の網掛けの領域)。「so hot」は、「気温の高さがsoの範囲にある(そのような程度である)」ことを表します。
「so」は、that節によって定まる範囲を指し、この文では「野球ができない範囲」となります。so ~ that構文では、程度副詞「so」の程度が、従属節であるthat節によって定まります。
It is [too hot] to play baseball.
主節の「It is too hot」を考えます。形容詞「hot」は、気温が尺度であることを表しています(上の図の左側「hot」の図)。程度副詞「too」は、「特定の範囲を超えている」ことを表します(上の図の右側「too」の図の網掛けの領域)。「too hot」は、「気温の高さが特定の範囲を超えている」ことを表します。
右側「too」の図で、網掛けより下の領域が「特定の範囲」であり、不定詞「to play baseball」によって定まります。ここでは「野球ができる範囲」となります。too ~ to do 構文では、不定詞によって範囲が定まり、tooは、不定詞によって定まる範囲を超えていることを表します。
You are [old enough] to have a cell phone.
主節の「You are old enough」を考えます。形容詞「old」は、年齢が尺度であることを表しています(上の図の左側「old」の図)。程度副詞「enough」は、「十分な程度である」ことを表します(上の図の右側「enough」の図の網掛けの領域)。「old enough」は、「年齢が十分な程度である」ことを表します。
「enough」が何に対して十分であるかは、不定詞「to have a cell phone」によって定まります。すなわち「携帯電話を持てる範囲」です。enough ~ to do 構文では、不定詞によって程度の範囲が定まり、enoughは、不定詞によってが定まる範囲であることを表します。