生成文法の知見(1) 英語の基本文型と生成文法から考える「実用的文構造」

英文構造

  英文の全体構造を示す「実用的文構造」を紹介します。たった一つの文の形で、複雑な文も理解することができます。

伝統的英文法の基本文型

  伝統的英文法の基本文型は、動詞が必要とする補語C、目的語O、付加語Aの数で分類されています。基本5文型は、補語C、目的語Oの数で分類されていて、7文型では、5文型にSVAとSVOAが加わり、8文型ではさらにSVCAが加わります。

基本5文型: SV,         SVC,           SVO,           SVOO, SVOC
基本7文型: SV, SVA, SVC,           SVO, SVOA, SVOO, SVOC
基本8文型: SV, SVA, SVC, SVCA, SVO, SVOA, SVOO, SVOC

SVAの例:  She lives in Tokyo.
SVCAの例: They are fond of TV games.
SVOAの例: He put the pen on the desk.

生成文法から考える「実用的文構造」

  実際の文では、主語Sの前にthatなどの接続詞があったり、文末に修飾的な前置詞句があります。英文を読んだり話をしたりする上では、これらの付加的要素を含めた文構造が実用的だと思いますが、そのような文構造は見あたりません。

  そこで、生成文法の理論から、「実用的文構造」を考えてみます。生成文法では、thatやifなど従属節を導く接続詞を補文標識(complementizer: Comp)と呼んでいます。この補文標識が、従属節を他の語句に結び付ける働きをしています。補文標識の前には指定部(specifier: Spec)と呼ばれる場所が存在し、wh疑問詞の移動先となります。目的語、補語の後には、様態/場所/時/目的などを表す前置詞句や副詞が配置されます。前置詞、副詞の文法機能により、他の語句に結び付きます。

  これらの要素をまとめると、「実用的文構造」として、以下のような構造ができます。

実用的文構造 =
    指定部 + 補文標識
     + 主語 + 動詞 + 補語/目的語 + 補語/目的語
      + 前置詞句/副詞句 ・・・

Practical Sentence Structure =
             (Spec) + (Comp) + S + V + C/O + C/O + A ···

ここで、「/」は、一方を選択する意味、Aは「前置詞句/副詞」を意味します。各項は、語句が配置される場所を意味しています。

「実用的文構造」の具体例

  具体的な文を見ていきます。例文は、『ジーニアス英和大辞典』(2001)大修館書店 からです。

(1)  Our class is going to London tomorrow.
 私たちのクラスは明日ロンドンへ行きます。

SpecCompSVC/OC/OAA
Our classis goingto Londontomorrow

場所と時を表す句がAの項に入っています。

(2)  They told us jokes.
 彼らは私たちに冗談を言った。

SpecCompSVC/OC/OAA
Theytoldusjokes.

間接目的語usと直接目的語のjokesが、C/Oの項に入っています。

(3)  He is fond of mountains.
 彼は山が好きです。

SpecCompSVC/OC/OAA
Heis fondof mountains.

「形容詞+前置詞句」の構造です。熟語としてではなく、基本的な文の構造として理解することができます。

(4)  What was Jeff’s reaction when you told about the job?
 仕事について話した時、ジェフの反応はどうだった?

SpecCompSVC/OC/OAA
WhatwasJeff’s reaction
whenyoutoldabout the job?

whatの節が主節で、whenの節が従属節です。wh疑問文では、疑問詞はSpecの位置に入り、助動詞はCompの位置に入ります。whatとwasが本来の位置から文頭へ移動し、疑問文が形成されます。whenがCompに入り、従属節を主節に結び付けています。

  このように主節も従属節も同じ文構造として認識することができます。長くて複雑な文であっても、同一の文構造が並んだものとして解釈できます。ここに紹介した「実用的文構造」は当研究所独自のものですが、英語学習者にとって有益なツールになるものと考えています。

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