「程度副詞+形容詞」構造(3)  差分を表す10 cm tallerも「程度副詞+形容詞」構造

英文構造

  「程度副詞+比較級」の説明です。「10 cm taller」は「背が10 cm 高い」という意味で、10 cmは比較対象との差を表します。比較級の前の数量が差分を表す理由を「程度副詞+形容詞」構造によって説明します。far tallerやno moreも、同じ構造の表現です。

例文と図解

Tom is 10 cm taller than Emmy.

  意味は「トムはエミーよりも10 cm 背が高い。」です。

  「taller」は、「程度副詞+形容詞」構造(2)で説明したように、「tall」と「-er」に分解され、形容詞「tall」が尺度(背の高さ)を表し、程度副詞相当の「-er」がその程度(比較標準に対し程度が高いこと)を表します(上の図)。

  修飾関係でいうと、程度副詞相当の「-er」が形容詞「tall」を修飾し、「taller」の前の「10 cm」は、「-er」を修飾します。

  「-er」自体、比較標準からの大小を考えることができるので、尺度を示す副詞となります。「10 cm + -er」は、「程度副詞+副詞」という構造であり、「程度副詞+形容詞」構造と同類の構造です。

  「-er」は、「比較標準からの程度」を表します(上の図の左側「-er」の図)。「10 cm」は、「-er」の程度が長さとして10 cm であることを表します(上の図の右側「10 cm」の図)。「10 cm + -er」は、「比較標準からの程度が10 cm である」ことを表します。

  「10 cm taller」は、「身長が尺度であり(tall)、比較標準よりも高く(-er)、比較標準からの値が10 cm である」ことを表します。「10 cm」が差分の値となるのは、「10 cm」が「-er」を修飾し、その値を与えるためです。

Tom is far taller than Emmy.

  意味は「トムはエミーよりもずっと背が高い。」です。

  この文は、前の例文の「10 cm」を「far」に代えたものです。「far」は、比較級を強調する語として学びますが、「-er」を修飾する程度副詞とみることができます。

  「far」と「 -er」の関係を説明します。

  「-er」は、「比較標準からの程度」を表します(上の図の左側「-er」の図)。「far」は、程度が高いことを表します(上の図の右側「far」の図の網掛けの領域)。「far + -er」は、「比較標準からの程度が尺度であり、その程度がfarである(とても高い)」ことを表します。

  「far taller」は、「身長が尺度であり(tall)、比較標準よりも高く(-er)、比較標準からの値がとても高い(far)」ことを表します。「far」は、身長の差分についての情報となります。

This room is no larger than a closet.

  意味は、「この部屋はクローゼットほどの大きさだ。」です。

  「no+比較級」は、慣用的な意味がありますが、まずは文字通りの意味を確認します。

  「larger」は、形容詞「large」と程度副詞相当の「-er」に分けられ、「large」は「尺度が広さであること」を表し(上の図の左側の「large」の図)、「-er」は「その程度が比較標準に対して高いこと」を表します(上の図の右側の「-er」の図)。

  「no larger」の「no」は、「-er」を修飾する程度副詞です。「no」と「-er」の関係を上の図に示します。

  「-er」は、「比較標準からの程度」を表します(上の図の左側「-er」の図)。「no」は、程度がゼロであることを表します(上の図の右側「no」の図)。「no + -er」は、「比較標準からの程度が尺度であり、その程度がゼロであることを表します。結局、差分はゼロとなります。

  「no larger」の文字通りの意味は、「広さが尺度であり(large)、比較標準よりも広く(-er)、比較標準からの程度の値がゼロである(no)」、すなわち「比較標準と同じ広さである」となります。一見、「比較標準よりも広い(-er)」と「値がゼロである(no)」とが矛盾しているように感じられます。

  「no larger」の慣用的な意味は、「large」の逆の意味で、「狭い」となります。読み手に違和感を与えて、逆の意味を強調する修辞的表現です。

  「This room is no larger than a closet.」では、狭い場所の典型としてクローゼットを挙げ、この部屋の狭さを強調しています。

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